『ろくでなしBLUES』や『ROOKIES』で知られる森田まさのり氏が挑んだ初のサスペンスホラー『ザシス』。
本作は、中学教師・山内海の周囲で起こる連続殺人事件と、落選小説『ザシス』の奇妙な一致を描いています。
本記事では、ザシスは完結しているのか?全巻のあらすじから最終回のネタバレ考察までを詳しく解説します。
『ザシス』は完結済み!全3巻と基本情報
- 作品名:ザシス
- 作者:森田まさのり
- 掲載誌:グランドジャンプ(集英社)
- 連載時期:2023年1号~2024年10号
- 巻数:全3巻完結
- ジャンル:サスペンス・ホラー(いじめミステリー)
森田まさのり先生の漫画『ザシス』はすでに完結しています。
集英社『グランドジャンプ』にて2023年1号から2024年10号まで連載され、単行本は全3巻で完結しました。
森田まさのり先生といえば『ろくでなしBLUES』『ROOKIES』『べしゃり暮らし』などで有名ですが、本作『ザシス』は初のサスペンスホラー作品であり、これまでのスポーツ青春漫画とは一線を画す異色の意欲作です。
中学校の教師が主人公という点や、青春漫画で培われた圧巻の画力・表情描写はそのままに、陰惨ないじめと連続殺人事件という異色のテーマを描き切ったことで高い評価を得ています。
連載中から緻密に練られた謎と心理描写が話題を呼び、多くの読者を惹きつけました。
『ザシス』各巻あらすじ(ネタバレ注意)
ここからは『ザシス』全3巻それぞれの詳しいあらすじをネタバレありで解説します。
物語の序盤から最終巻まで順を追ってストーリー展開と重要なポイントを整理していきましょう。
第1巻あらすじ – 謎の小説と連続殺人事件の幕開け
物語は衝撃的な殺人事件から始まります。深夜、ある男性が何者かに身体を拘束されてビルの屋上から突き落とされ殺害される場面が冒頭を飾ります。
このニュースを飲食店のテレビで目にしたのが、本作の主人公である山内 海(やまうち かい)です。24歳の山内海は中学校の新米教師で、生徒想いの熱血漢ですが、勤務する学校は「評価主義」を重視する体質で、同僚教師から「いじめ問題なんて表沙汰にするな」と釘を刺されるような状況でした。
海は偶然、校内で生徒が自作自演でいじめを受けたフリをする現場を目撃します。この出来事と校内の空気にモヤモヤする海でしたが、その矢先に飛び込んできたのが中学時代の同級生・鈴木侑己(すずき ゆうき)が殺されたというニュースでした。驚き戸惑う海でしたが、さらに奇妙な符合が明らかになります。
海の恋人で出版社「小説つばさ」の新人編集者をしている八木沢 珠緒(やぎさわ たまお)は、公募新人賞の落選作の中に今回の事件と酷似した内容の小説を発見したのです。その小説のタイトルこそ『ザシス』、作者名は佐伯 遥人(さえき はると)。
遥人とは海と鈴木の中学時代の同級生でした。珠緒は仕事の勉強がてら偶然その落選作を読んでおり、はじめは退屈な小説だと思っていたものの、ニュースの内容が小説に描かれた事件展開と一致していることに気づきます。
珠緒からこの話を聞いた海は驚愕します。鈴木の死は、遥人の小説『ザシス』に書かれていた殺人と同じ方法だったのです。やがて鈴木に続いて第2の事件も発生します。今度の被害者は川瀬という男性でした。
川瀬もまた海たちの中学時代の同級生で、鈴木同様に何者かに襲われ死亡します。川瀬は暗い地下室に拘束され、大量のネズミを使った拷問を受けて惨たらしく殺害されました。奇妙なことに、この残忍な手口もまた珠緒が読んだ小説『ザシス』の内容と一致していたのです。
2つの事件の被害者がいずれも中学時代の同級生であり、かつて佐伯遥人をいじめていた人物だったことが判明します。実は鈴木と川瀬は、中学時代に遥人をいじめていたグループのメンバーでした。
海の同級生たちの間で不安が広がる中、海と親友の田宮 晋太郎(たみや しんたろう)のもとに、「亡くなった鈴木を偲ぶ同窓会」を開くという案内状ハガキが届きます。差出人はなんと他ならぬ佐伯遥人の名前でした。
海と晋太郎は「もしや遥人が生きていて復讐を?」と疑い、小説『ザシス』の続きを確かめようとします。しかし珠緒は肝心の小説後半の原稿を紛失してしまっており、結末がわからない状況です。
そんな中、別の同級生たちも動揺を見せます。かつて遥人をいじめていた児玉 凌(こだま りょう)と重松は、「鈴木や川瀬が殺されたのは遥人の仕業ではないか」と噂します。児玉は遥人による復讐説を口にしますが、重松は「あいつ(遥人)はもう1年前に死んでいるはずだ」と児玉に反論します。
実は、中学時代のいじめっ子たちは「遥人は既に亡くなっている」という事実を知っていたのです。この発言は物語の鍵となります。
物語の合間には、小説『ザシス』の内容が随所に挿入されます。小説パートでは中学生時代の佐伯遥人がどのようないじめを受けていたかが詳細に描かれていきます。内向的で友人の少なかった遥人には唯一の親友として仁志 和真(にし かずま)というクラスメートがいました。
しかしある日突然、鈴木・児玉・川瀬・重松ら4人組に執拗ないじめの標的にされてしまいます。クラスメート達は誰も助けず「座視(ザシス)する」ばかりで、親友の和真でさえ見て見ぬ振りをしてしまいました。
その中で山内海だけは勇気を振り絞り、一度だけ遥人を庇おうといじめを止めに入ったことがあったのです。タイトル『ザシス(座視す)』は「いじめを傍観する」ことへの皮肉を込めたものだと、この小説パートからも読み取れます。
そんな過去が明かされる中、第1巻のクライマックスでは事件の核心に迫る重大なエピソードが描かれます。場面は一転して数年前――大人になった遥人と児玉の偶然の再会です。
コンビニで児玉とばったり出会った遥人は、児玉から万引きの片棒を担がされそうになります。しかし臆病だった少年時代とは違い、遥人は児玉の犯行を店員に告げ口してやり返しました。
逆上した児玉は店から逃走しますが、防犯用のカラーボール(染料ボール)を店員に投げつけられ、体に塗料を浴びてしまいます。児玉は共犯である重松に車を出すよう連絡し、逃走の手助けを求めました。
重松が車で迎えに来るまでの間、運悪くその場を通りかかった佐伯遥人に児玉は出くわします。怒りが収まらない児玉は遥人に殴りかかり、激しく暴行しました。そこへ車を運転して重松が到着します。
遥人は命の危険を感じて必死で逃げ出し、道路に飛び出しました。その瞬間、遥人は通りかかった車に轢き逃げされてしまうのです。路上に倒れ込んだ遥人の服には、先ほど児玉に付着したのと同じカラー染料がべったりと付着していました。
このままでは自分たちが遥人に暴行を加えていたことが露見してしまう――そう考えた児玉と重松は、咄嗟に遥人の身体を車に乗せ、遠く離れた山中へと運び出しました。そして恐ろしいことに、二人は遥人の遺体を山中に埋めて隠蔽してしまったのです。
児玉と重松による遥人死体遺棄という信じがたい過去。実はこの一部始終を木陰から見ていた人物がいました。なんとそれは山内海だったのです。
海は偶然現場を目撃してしまったものの、恐怖や動揺から声を上げることもできず、その場を去るしかありませんでした。親友だった遥人を救えなかったばかりか、その死と隠蔽を目撃しながら黙っていたという過去に、海は深い罪悪感を抱えることになります。
同級生遥人は事故で亡くなっていた――物語序盤で重松が語った「遥人はもう死んでいる」という衝撃の真相は、実は海自身が加害者の一端を担っていたという形で読者にも示されました。海にとって遥人の死は自分が引き起こした事故でもあり、いじめを止めきれなかった自身の弱さの象徴でもあったのです。
その後、第1巻のラストでは再び現在の連続殺人事件に話が戻ります。珠緒は事件解明の手がかりを掴もうと、小説『ザシス』の一次選考で落選にした審査員で人気小説家の本屋敷を訪ねます。
彼なら紛失した『ザシス』後半の内容を覚えているかもしれないと考えたからです。しかし本屋敷は珠緒の質問に不快感を露わにし協力を拒否、収穫は得られませんでした。
一方その頃、海はついに珠緒と晋太郎に過去の秘密を打ち明けます。自責の念に耐えかねた海は「実は1年前、誤って遥人を轢き殺してしまったのは自分だ」と告白したのです。
ここで明かされたのは、遥人を轢いた車の正体が海だったという驚愕の事実でした。海は偶然車で通りかかり、道路に飛び出してきた人影(それが遥人だとは知らず)を跳ねてしまっていたのです。
罪の意識に苛まれた海は、当時現場から逃げ出したものの、児玉たちが遺体を埋める現場を追いかけて目撃していたのでした。この告白に珠緒と晋太郎は愕然としつつも、まずは事件の真相を確かめようと決意します。そして3人は遥人を埋めたはずの山奥の現場へ向かいました。
ところが、海たちが山中で見たものは信じ難い光景でした。遥人を埋めた場所に大きな空洞があり、中から人が這い出したように土が荒らされていたのです。そこに遥人の遺体は見当たりませんでした。
まるで遥人が墓穴から蘇って自力で這い出したかのような痕跡に、海たちは恐怖に戦きます。「死んだはずの遥人が生きているのか…?」という不気味な疑念を抱えたまま、第1巻は幕を閉じます。
第2巻あらすじ – 疑惑と恐怖が募る中盤展開
第2巻では、さらに事件が急展開します。埋めたはずの遥人の死体が消えていたことで、海たちは「遥人生存説」も捨てきれなくなります。しかし真実を掴む手がかりは乏しく、事件はなおも続いていきました。
次なる標的となったのは、いじめ加害者グループの残る二人児玉 凌と重松です。彼らは鈴木・川瀬の死を受け、戦々恐々として身を潜めようとしますが、やはり悲劇は避けられませんでした。
まず重松が何者かに襲われます。重松は何らかの方法で殺害され、その遺体は後に河川敷で発見されました(具体的な殺害方法は物語中で描かれますが、かなりショッキングなものでした)。
重松の無残な死に児玉は震え上がります。さらに続けざまに児玉もまた標的となりました。児玉は暗がりで襲撃され、激しい暴行と拷問を受けて瀕死の重傷を負います。
犯人は執拗に児玉へ「自分がやったいじめの内容」を思い知らせるかのような方法で痛めつけ、その死に様は非常に凄惨でした(※児玉の最期の描写は読者の間でも「エグい」と評されるほど苛烈なものです)。
鈴木、川瀬、重松、児玉――これで中学時代に遥人を直接いじめていた4人は次々と報復を受けたことになります。残る同級生で「いじめの主犯格」となっていた人物がもう一人いました。それが海の親友だった田宮 晋太郎です。
実は遥人へのいじめを裏で扇動していた黒幕こそ晋太郎であり、鈴木たち4人組は彼の指示で動いていたに過ぎなかったことが明らかになります。
晋太郎本人は表立って手を下さず影で糸を引いていたため、周囲からは知られずに済んでいたのです。この事実に海は愕然としますが、同時に晋太郎もまた命を狙われる可能性が高まったことを意味していました。
物語が進む中、珠緒は再度小説家・本屋敷へのアプローチを試み、ついに紛失していた『ザシス』原稿後半の内容を知ることに成功します。本屋敷によれば、小説『ザシス』の結末部分には「いじめの真の黒幕への復讐」が描かれていたとのことでした。
それを聞いた海と珠緒は愕然とします。いじめの真犯人=晋太郎に対する報復が小説で予告されている以上、現実でも晋太郎が狙われる危険が非常に高いからです。
こうして緊迫の状況の中、佐伯遥人の同窓会が決行される日を迎えます。差出人不明(遥人名義)の同窓会招待に応じた海、珠緒、晋太郎、仁志和真(遥人の元親友)ら同級生たちは、指定された会場である佐伯家(遥人の実家)へと集まりました。
久しく訪れる者のなかった佐伯家の一室は不気味な静けさに包まれています。誰もいないはずの部屋に集められた旧友たちは、不安と疑念を抱えながら待ちました。
すると突然、室内の照明が落とされ、大型モニターに恐ろしい映像が映し出されます。それはこれまで起きた同級生たちの殺害シーンを撮影したものでした。屋上から転落死させられる鈴木、ネズミに侵され絶叫する川瀬、血まみれで絶命する重松、そして無残に切り裂かれる児玉――次々と流れる惨劇の映像に、その場の全員が凍りつきます。
映像の最後には「次はお前だ」という趣旨の不気味なメッセージが映し出されました。それは田宮晋太郎、彼自身に向けられた犯行予告だったのです。
仲間たちが次々殺される映像を目の当たりにし、ついに晋太郎は恐怖に耐えられず部屋から逃げ出します。海と珠緒も慌てて後を追いました。暗闇の中を逃走する晋太郎。
しかし彼の前に黒い影が立ち塞がります。仮面を被った人物が現れ、悲鳴を上げる晋太郎に襲いかかったのです。駆けつけた海が目にしたのは、地面に倒れ込み血まみれになった晋太郎と、その前に立つ犯人の姿でした。
仮面の人物は静かに仮面を外しました。海と珠緒が息を呑みます。そこにいたのは信じられない人物――佐伯遥人本人だったのです。
そう、遥人は生きていました。瀕死の重傷を負い埋められたはずの遥人は、奇跡的に一命を取り留め、密かに息を潜めていたのです。遥人は母親の手によって救出され療養していましたが、ついに自ら動けるまでに回復し、最後のターゲットである晋太郎への復讐に現れたのでした。
遥人は苦悶する晋太郎を見下ろし、震える声で言いました。「これで終わりだ…」――いじめの黒幕だった晋太郎に止めを刺したその刹那、彼の目から一筋の涙がこぼれ落ちます。
それは愛する息子を鬼へと変貌させてしまった親友への慟哭なのか、それとも長年の地獄に終止符を打った安堵の涙だったのか…。こうして第2巻は、佐伯遥人=真犯人(?)の姿を読者に見せつけ、謎を深めながら幕を下ろします。
第3巻あらすじ – 事件の真相と衝撃の結末
最終巻となる第3巻では、『ザシス』の全ての謎と事件の真相が明かされます。仮面の犯人の正体が佐伯遥人だったことで、海と珠緒は大混乱に陥ります。死んだはずの遥人が生きていた上に、連続殺人を実行していたとなれば全て辻褄が合うかのように思えました。しかし、物語はそれほど単純ではありません。
遥人が姿を現した佐伯家の同窓会会場では、瀕死の晋太郎を前にしてある人物がゆっくりと現れました。それは遙人の母親です。ここで明らかになる真相――連続殺人事件の真犯人は、佐伯遥人の母親であったという衝撃的な種明かしがなされます。
遥人の母親は一連の事件について涙ながらに語り始めました。彼女は1年前、息子の遥人が突然行方不明になったことを不審に思い、持たせていた携帯電話のGPSで居場所を追跡しました。
そして深夜に山中へ駆け付け、土の中に埋められている息子・遥人の姿を目撃したのです。必死に土を掘り返すと、幸い遥人はまだ息がありました。母親は瀕死の遥人を助け出し、人知れず介抱します。
しかし息子は意識不明の重体。その傍らで母親は、遥人が大事にしていた原稿用紙の束を発見します。そう、彼女は遥人の書いた小説『ザシス』をここで初めて目にしたのです。
小説『ザシス』に綴られていたのは、遥人が受けていた壮絶ないじめの記録と、復讐の計画でした。それを読み終えたとき、母親の中で何かが壊れてしまいます。「どうして先生も友達も誰も助けてくれなかったの!」――息子が味わった苦痛と、誰からも救われずに奪われた未来。
その理不尽さへの怒りが、彼女の心に暗い炎を灯しました。息子をこんな目に遭わせた連中に報いを。母親は意識を取り戻さない遥人に代わって、小説『ザシス』のシナリオ通りに復讐を完遂することを決意したのです。
こうして幕を開けた“母による復讐劇”。事件の犯人は、最初から最後まで遥人の母親でした。鈴木を屋上から突き落としたのも、川瀬にネズミ地獄を味わわせたのも、重松や児玉を残虐に殺害したのも、すべて一人息子を想うあまり狂気に駆られた母親の犯行だったのです。
いじめ加害者たちを小説に倣って始末した後、最後に残った黒幕・晋太郎だけは息子である遥人自身の手で決着をつけさせようとしました。
母親は昏睡状態から意識を取り戻した遥人に全てを打ち明け、彼を復讐の最終章へと駆り立てたのです。こうして、意識を取り戻した遥人は自ら晋太郎を殺害し、長きにわたる復讐を完遂しました。
しかし真相が明かされた今、目の前には瀕死の晋太郎と、凶器を手に涙を流す遥人、そしてその後ろで静かに微笑む母親がいます。狂気は去っておらず、次なる標的はもはや「いじめ加害者」に留まらない状況でした。
母親は恨めしげに海へ視線を向けます。「海先生…あなたも、あの時どうして助けてくれなかったの?」――そう問いかける母親の手には包丁が握られていました。
実は母親は、息子をいじめた者たちだけでなく“座視していた人々”に対しても強い怒りを抱いていたのです。助けようとしたとはいえ結果的に遥人を救えず、事故で轢いて死に追いやった山内海もまた、彼女にとっては憎むべき存在でした。
絶体絶命の海。しかしその時、弱々しい声が「もうやめて…」と制します。遥人が母親に向けて首を横に振ったのです。「お母さん、もう充分だ。僕は…僕は先生に助けてもらいたかったんじゃない。僕が弱かったんだ…」遥人はか細い声でそう漏らし、母親の刃を制止しました。
愛する息子からの言葉に、母親はハッと我に返ったように動きを止めます。復讐に燃えた彼女の心にも、遥人の一声が届いたのでした。
そして次の瞬間、遠くからサイレンの音が近づいてきました。珠緒が機転を利かせ警察を呼んでいたのです。母親は観念したように泣き崩れ、駆けつけた警察に静かに連行されていきました。
横たわる晋太郎は既に絶命し、遥人も長い闘いで力尽き気を失っています。海はぼろぼろの遥人を抱きかかえながら、ただ呆然と夜明けの空を見上げました。
数日後――入院した遥人は一命を取り留めました。彼の証言と母親の供述により、一連の事件の全貌が世間に明らかになります。海は自責の念から逃げず、自ら警察に過去の罪を告白しました(遥人を轢いたひき逃げの件と、埋葬の隠蔽を目撃し黙っていた件です)。
しかし遺族である遥人と父親(母は収監)が告訴を望まなかったこと、また事故当時パニックに陥って適切な判断ができなかった事情などが考慮され、海は起訴猶予となりました。
皮肉にも遥人親子との奇妙な再会と事件の顛末によって、海は自身の罪と正面から向き合い、未来への教訓を得ることとなったのです。
最後の場面、職場である中学校の教室にて、海はある生徒のいじめを未然に防ぎます。「今度こそ絶対に見て見ぬふりはしない」――そう心に誓う海の表情は、どこか晴れやかでした。誰もが座視するだけだった過去を繰り返さないために。こうして物語は、人間の弱さと強さを見つめ直すような余韻を残して幕を閉じました。
ザシス最終回の展開と結末まとめ

『ザシス』の最終回(第3巻終盤)は、上述した通り衝撃的な真相と結末が描かれました。以下にポイントを整理しておきます。
- 犯人の正体
- 遥人は生存していた
- 最終局面
- 結末後の余韻
犯人の正体
連続殺人事件の犯人は、亡き佐伯遥人の母親でした。母親は埋められていた息子を救出し、彼の書いた小説を知ったことで復讐心に取り憑かれ、息子の仇討ちを代行していたのです。
犯行動機は「息子をいじめた者への復讐」と「見て見ぬふりをした者への怒り」であり、いじめ加害者達に小説通りの制裁を下しました。
遥人は生存していた
佐伯遥人自身も奇跡的に一命を取り留めて生存していました。意識不明の状態で母親に匿われ、最終局面で目覚めていじめの黒幕だった晋太郎を自らの手で殺害します。
この展開により、読者は遥人が生きていたことと、彼が最終的な復讐を果たした事実を知ることになります。
最終局面
クライマックスは佐伯家に集められた同窓会メンバーの前で犯行映像が流され、晋太郎が殺害されるシーンへと突入しました。
遥人と母親が姿を現し、真相を語る中で海や珠緒は震撼します。母親は海にも刃を向けますが、遥人の説得で思い留まりました。最終的に警察が駆けつけ、母親は逮捕、晋太郎は死亡、遥人は救出され物語は収束します。
結末後の余韻
事件後、海は自らの罪を告白し償おうとしました。遥人も入院し命を取り留め、母親は逮捕という結果になります。
海は教師として「二度といじめを座視しない」と心に誓い、贖罪と再出発の思いで日常へ戻っていきます。物語のラストは、いじめ問題に対し読者にも強い問いかけを残す結末となりました。
最終回は犯人が意外な人物(母親)だったことで大きなどんでん返しがあり、ネット上でも「予想を裏切られた」「後味は良いとは言えないが考えさせられる結末」といった感想が多く見られました。
しかし、いじめ加害者たちに制裁が下ったことや、主人公・海が過去と向き合い成長を見せた点で一定のカタルシス(爽快感)を感じた読者も少なくありません。物語全体を通して見ると、「もし本当にいじめ被害者の親が復讐に走ったら…」という極限のシミュレーションと、人間の善悪の境界が描かれた問題作と言えるでしょう。
『ザシス』犯人は誰?謎の真相と動機を解説

作中で読者が最後まで翻弄されたのが「犯人は一体誰なのか?」という謎でした。
連載中は様々なミスリードや考察が飛び交い、犯人候補が二転三転するスリリングな展開が特徴でした。ここでは犯人の正体とその動機を改めて整理します。
- 犯人(実行犯)の正体
- 共犯者と計画
- 犯人の動機
犯人(実行犯)の正体
前述の通り、真の犯人は佐伯遥人の母親です。彼女は息子の復讐を代行すべく、自ら殺人を重ねていました。途中までは仮面を被り、ビデオカメラで犯行の様子を撮影しつつ小説のシナリオ通りに犯行を進めています。
母親が犯行に及んだ直接の動機は「息子をいじめた連中への報復」でしたが、根底には「息子を奪われた悲しみと狂おしいほどの愛情」がありました。いじめによって人生を狂わされた息子を想うあまり、常識や倫理の一線を越えてしまったのです。
共犯者と計画
事件の計画自体は、小説『ザシス』の筋書き=遥人自身が遺した復讐のシナリオに基づいています。母親はそれを忠実になぞる形で犯行に及びました。共犯者という意味では、終盤で遥人本人が目覚めて犯行に加担しています。
厳密には、鈴木・川瀬・重松・児玉の殺害までは母親単独、最後の晋太郎への制裁のみ遥人が実行犯という形です。なお、母親がこれらの犯行を全て一人で遂行できたのか疑問に感じる読者もいましたが、作中では母親が周到に準備していたことが示唆されており、一定の説得力をもって描かれています。
また、犯行時に仮面と変声機を用いていたため、母親は自らの素性を隠しつつ周囲を欺いていました。例えば、海たちは一時「犯人は遥人ではないか?」と疑いますが、遥人が死亡しているという前提と矛盾するため困惑します。また、もう一人の容疑者候補として浮上したのが仁志 和真(遥人の親友)でした。
仁志は唯一遥人の苦しみを知りながら傍観していた人物であり、犯人像として怪しい要素もあったため、読者の間では「仁志が黒幕では?」という考察も出ていました。しかし最終的には彼も被害者(真相を知った母親に襲われ気絶させられる)側となり、犯人ではなかったことが判明します。
犯人の動機
犯人=母親の動機は「息子・遥人の復讐を遂げること」でした。息子が中学時代に酷いいじめを受け、自殺同然の事故死に追いやられたも同然――そう受け止めた母親の怒りは想像を絶するものがあります。
さらに悪夢は終わらず、息子の死後も加害者たちは何食わぬ顔で生活している。母親は息子が書き残した小説を“遺言”として受け止め、「自分が裁きを下さねば」と決意しました。その意味で動機の中心は復讐心ですが、物語後半で明らかになったように彼女の矛先は単に加害者4人組だけではなく、「いじめを見て見ぬふりだった人々」全般にまで及んでいました。つまり、傍観者への怒りも動機の一つとなっていたのです。
実際、クライマックスでは海にも襲いかかろうとしていますし、「教師やクラスメートたちも同罪だ」という趣旨の発言も見られました(この点はタイトル『ザシス(=座視す)』の意味とも深く関わっています)。
以上が犯人の正体と動機の概要です。『ザシス』の犯人像がこれほど複雑で意外性に富んでいたため、最終回直前まで多くの読者が「真犯人探し」に熱中しました。
山内海二重人格犯人説(主人公自身が無意識に復讐しているのでは?)を唱える向きもあれば、遥人生存説や仁志黒幕説、さらには母親犯人説まで様々な考察が飛び交いました。最終的に母親犯人説が的中した形になりますが、物語上では完全には語られないグレーな部分も残しており、読者の想像力に委ねる部分もあります。
例えば「母親一人でどうやって成人男性4人を次々殺せたのか?」や「映像撮影や招待状送付など念入りな計画を一人で立てたのか?」といった点です。これらについては明確な答えは提示されませんが、裏を返せばホラーサスペンスらしい“不気味な余韻”として機能しています。
作中の謎と伏線・読者間で盛り上がった考察ポイント

『ザシス』は全3巻という短い作品ながら、多くの謎や伏線が散りばめられ、読者の考察を大いに刺激しました。ここでは作中の主な謎と回収、そして読者たちの間で話題になった考察ポイントについてまとめます。
- タイトル『ザシス』の意味
- 小説と現実のシンクロ
- 「遥人は本当に死んでいる?」問題
- 伏線の回収
- 読者の考察ブーム
タイトル『ザシス』の意味
一見するとカタカナの不思議なタイトルですが、作中で明かされるように「ザシス」とは「座視す(ざしす)」、すなわち「傍観する・黙って見ている」という意味に由来しています。
これはまさに物語のテーマそのものであり、いじめを見て見ぬふりした人々への批判が込められています。遥人の書いた小説タイトルが『ザシス』であったことも、彼がいじめられているとき誰も助けてくれなかった怒りと悲しみを反映したものでしょう。
最終的に母親が復讐の矛先を「座視していた者(教師や友人)」にまで向けたことからも、このタイトルの深い意味が実感できます。
小説と現実のシンクロ
劇中劇として登場した遥人の小説『ザシス』と、現実の連続殺人事件が完全に一致している点は物語の大きな謎でした。その理由は最終的に「母親が小説通りに犯行を模倣していたから」と判明します。
連載中は「もしかして小説が現実を予言しているのでは?」とか「誰かが小説を真似ているのでは?」と様々な推測がありましたが、真相は「小説自体が犯行計画書」であり、それを母親が実行犯として実現していたわけです。この仕掛けにより、物語はフィクション(小説)と現実が交錯する不気味さを演出していました。
「遥人は本当に死んでいる?」問題
物語序盤で「遥人は死んだ」という情報が提示されつつも、事件が小説通り起きるため「実は生きているのでは?」という疑惑が絶えませんでした。特に第2巻ラストで遥人の姿が現れた(仮面の犯人として出てきた)時は読者も主人公たちも「幽霊なのか生存なのか」混乱しました。
しかし最終的には前述の通り遥人は生存していたことが明かされます。これにより、一見オカルトや超常現象にも思えた現象は全て辻褄が合う形となりました。“死者の復讐”のようなホラー的ミスリードでハラハラさせつつも、蓋を開ければ人間ドラマとして合理的な説明がなされる構成は見事でした。
伏線の回収
3巻という短さながら、本作には多くの伏線が張られていました。例えば第1巻で海が学校で目撃した自作自演のいじめ事件は、「いじめ問題を隠そうとする大人たち」というテーマ提示であると同時に、“嘘のいじめ”というモチーフで「遥人死んだはずが実は生存」という展開を暗示していたとも読めます。
さらに各被害者の殺され方(屋上から落下、ネズミ地獄など)は中学時代に彼らが遥人にした行為に由来しており(例えば屋上から突き落とすフリをした、ペットのネズミで脅した等)、いじめの内容がすべて復讐方法の伏線になっていました。
背景に描かれた卒業アルバムや、珠緒がなくした原稿用紙など、小さな要素まで後に重要な意味を持ってくる構成は読み返すと唸らされます。
読者の考察ブーム
『ザシス』連載中、SNSや掲示板では盛んに犯人予想や展開予想が行われました。代表的なものに「山内海の裏人格犯人説」があります。
これは主人公の海が心に闇を抱え、もう一つの人格が復讐を遂行しているのではという大胆な仮説で、実際に作中でも「海と犯人の仮面が半々に描かれた扉絵」が存在したため現実味を持って語られました。結局この説はミスリードでしたが、海自身が加害者側の罪を負っていたこともあって最後まで疑いが晴れない演出となっていました。
他にも「仁志和真黒幕説」(遥人の唯一の友人だった仁志が罪悪感から復讐を代理している説)や、「遥人父共犯説」(遥人の父親が裏で動いている説)など多彩な考察が飛び交いました。
作者はこうしたミスリードを意図的に散りばめ、読者に推理を委ねていた節があります。第3巻で犯人が明かされた後も「もしかすると真犯人は別にいるのでは?」と思わせる矛盾や情報が散見され、完全に断定しきらない終わり方にもなっています。
例えば「犯人一人では不可能では?」という違和感は、読者によっては「実は助っ人がいた」という解釈につながり、議論を呼びました。このように最後の最後まで考察の余地を残した点も本作の魅力でしょう。
総じて、『ザシス』はミステリーサスペンスとして巧みに作られた作品でした。ホラー的な恐怖演出と、いじめ・復讐という重いテーマ性が組み合わさり、読後には様々な感情が去来します。単なる勧善懲悪には終わらず、「もし自分があの場にいたら誰を助けただろうか?」と読者自身に問いを投げかけるような余韻が残ります。
作者・森田まさのりの背景と『ザシス』との関連

作者である森田まさのり先生の経歴や他作品との関連について触れておきます。森田先生は1980年代後半から活躍する漫画家で、不良少年漫画やスポーツ漫画で一時代を築いたベテランです。
代表作には高校ボクシングを描いた『ろくでなしBLUES』、高校野球部を舞台にした『ROOKIES』、お笑い芸人を目指す若者を描いた『べしゃり暮らし』などがあり、いずれも熱血青春路線のストーリーで人気を博しました。
そんな森田先生が本作『ザシス』で挑戦したのは、自身初となるサスペンス・ホラージャンルでした。得意のスポーツ路線から一転、いじめ問題と猟奇殺人を扱う展開はファンにとって驚きでしたが、その実力はジャンルが変わっても遺憾なく発揮されています。
例えば人物描写の巧みさ。森田作品といえば絵柄の美麗さやキャラクターの表情力が定評ですが、本作でも被害者たちが死の間際に見せる恐怖の表情や、追い詰められた海・珠緒の緊張感など、コマの隅々まで細やかに描写され臨場感を高めています。
また、いじめのシーンやグロテスクな殺害シーンもリアリティがありつつ過度に不快にならない表現で描かれており、これも作者の画力と演出力によるものでしょう。
他作品との関連性という点では、直接的な世界観のつながりはありません。ただしテーマ面では通じるものがあります。『ROOKIES』では高校教師が落ちこぼれ生徒たちに本気で向き合う物語でしたが、本作『ザシス』でも主人公は教師であり、「教師は生徒を守れるのか?」という命題が問われています。
森田先生は元来、青春群像の中で人間の弱さと成長を描くのが得意ですが、『ザシス』でもジャンルこそホラーでも根底には人間ドラマがあります。海という教師が、自らの弱さと罪を乗り越え「次は必ず守る」と決意するラストは、ある意味で森田作品らしい熱さと希望が垣間見える場面とも言えるでしょう。
漫画全巻を無料で読めるサイトやアプリはある?

漫画を無料で楽しみたいと考える方は多いでしょう。しかし、全巻を完全に無料で提供している合法的なサイトやアプリは存在しません。ただし、以下のような合法的な電子書籍サービスでは、一部の巻を無料で読めたり、初回特典として割引クーポンが提供されたりしています。
安全に漫画を楽しめる主なサービス
- ebookjapan:約18,000冊の無料漫画を提供。初回登録で70%OFFクーポンが6回分もらえる。
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- まんが王国:無料漫画が豊富で、ポイント還元や試し読みが充実している。
- ピッコマ:「待てば無料」システムで、多くの作品を無料で楽しめる。
- LINEマンガ:人気作品を多数取り扱い、無料話も豊富。
これらのサービスを活用することで、安全かつ合法的に漫画を楽しむことができます。また、期間限定の無料キャンペーンやセールを利用すれば、さらにお得に読むことが可能です。
電子書籍で読むなら、コミックシーモアがおすすめです。
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電子書籍サービス徹底比較は≫こちらの記事で解説しています。
【危険】漫画rawや漫画バンクは違法サイト

「漫画raw」や「漫画バンク」といったサイトは、著作権者の許可なく漫画を無断で掲載している違法な海賊版サイトです。これらのサイトを利用することには、以下のような重大なリスクがあります。
1. 法的リスク
2021年の著作権法改正により、違法と知りながら海賊版サイトから漫画をダウンロードまたは閲覧する行為も処罰の対象となりました。違反した場合、2年以下の懲役または200万円以下の罰金が科される可能性があります。
2. ウイルス感染の危険性
これらの違法サイトには、ウイルスやマルウェアが仕込まれていることが多く、アクセスするだけでスマートフォンやパソコンが感染するリスクがあります。また、フィッシング詐欺や個人情報の漏洩といった被害も報告されています。
3. 漫画業界への悪影響
違法サイトの利用は、漫画家や出版社の収益を奪い、新しい作品の創出や漫画文化の発展を阻害します。実際、2020年には海賊版サイトによる被害額が2,100億円に達したと報告されています。
違法サイトの利用は、法的リスクやウイルス感染の危険性が高く、漫画業界にも悪影響を及ぼします。そのため、合法的な電子書籍サービスを利用して、安全に漫画を楽しむことを強くおすすめします。各サービスでは、無料で読める作品やお得なキャンペーンが多数用意されており、安心して漫画を楽しむことができます。
『ザシス』完結:まとめ
森田まさのり先生の『ザシス』は、短期間で完結したにも関わらず読者に強烈な印象を残すサスペンスホラーでした。
完結済み(全3巻)であり、最終回まで読めば全ての謎は明かされるものの、単純な勧善懲悪では割り切れない複雑なテーマが余韻を引きます。
いじめの加害者と被害者、傍観者、そして復讐――それぞれの立場の心理を描き切った物語は、胸のすく展開と同時に考えさせられる部分も多く、読み応えは十分です。
最後に、本記事のポイントをおさらいしておきましょう。
- 『ザシス』は完結済み? – 2024年に完結しています。続編の予定は発表されていません。
- 全何巻? – 全3巻で完結です。コンパクトな巻数ながら密度の高いストーリーが展開されます。
- 各巻あらすじ – 第1巻では謎の小説と連続殺人が幕を開け、第2巻で復讐劇が加速、第3巻で真犯人と結末が判明します。いじめの過去と現在の事件が交錯し、予測不能な展開が続きます。
- 最終回の結末 – 犯人は意外にも被害者の母親であり、最終的に真相が明かされ復讐は完遂されます。主人公・海は自身の罪と向き合い、更生の道を歩み始めます。
- 犯人と動機 – 犯人は遥人の母親で、動機は息子へのいじめへの復讐と、傍観者への怒りでした。遥人も生存して最終的に黒幕へ報復を果たしました。
- 考察ポイント – タイトル『ザシス(座視す)』の意味や、小説と現実のリンクなど数々の謎がちりばめられ、読者の間で多くの考察が行われました。いじめを傍観することへの警鐘というテーマが全編を貫いています。
『ザシス』は既に完結した作品ではありますが、その内容は現代のいじめ問題や人間心理の闇を真正面から描き、多くの示唆を含んでいます。まだ読んでいない方はぜひ手に取ってみてください。単なるホラーサスペンスに留まらない深みのあるストーリーに圧倒されることでしょう。
そして既に読了した方も、もう一度物語を振り返って伏線やテーマを噛み締めてみると、新たな発見があるかもしれません。「座視する」ことの是非を問うた『ザシス』は、読み終えた後も私たちに問いかけを残し続ける問題作です。読後にはきっと、身近な誰かに語らずにはいられなくなることでしょう。ぜひこの機会に、『ザシス』の世界を存分に堪能してください。
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